メールで「〇〇拝」は失礼?正しい使い方を解説
ビジネスメールや目上への連絡で
「拝」を含む表現を使うべきか迷う人は多いものです。
結論から言えば、
「拝」は自分がへりくだって行為をすることを示す謙譲のサイン。
用法を誤らなければ丁寧で好印象ですが、
誤ると「失礼」「押しつけがましい」と受け取られることもあります。
ここでは意味・用法・NG例・官公庁メールでの慣行まで、
現場で迷わない基準を整理します。
「拝」の意味とその使い方
「拝」は「つつしんで〜する」「ありがたく〜する」
の意を持つ謙譲語の要。
“相手を立て、自分を低める”動作にのみ接続できます。
代表例は次の通りです。
・拝見する(=見る)
・拝読する(=読む)
・拝受する(=受け取る)
・拝聴する(=聞く)
・拝察する(=推し量る)
どれも主語は自分(自社)です。
相手の行為に「拝」を付けるのは誤りで、
尊敬語「ご覧になる」「お読みになる」などに置き換えるのが原則です。
「拝」を使う場面とは?
次の三つが軸になります。
1)相手から頂いた情報・物を受け取って確認したとき
例:添付資料を拝見いたしました。請求書を拝受しました。
2)自分の行為に敬意をこめて表明したいとき
例:後ほど議事録を拝送いたします(=つつしんで送る)。
3)儀礼的な書き言葉を必要とする正式文面
例:ご高配に心より拝謝申し上げます。
一方、スピード重視の社内チャット等では過度な「拝」は冗長です。
媒体のトーンに合わせて選択しましょう。
失礼とされる「拝」の使い方
次のような用法は避けます。
・相手の動作に「拝」を付ける
×「ご査収拝ください」→ ○「ご査収ください」/「ご確認ください」
・重ね敬語・二重敬語になる
×「拝見させていただきます」→ ○「拝見いたします」
・意味が合わない語につける
×「拝返信」「拝対応」など造語的な結合
・クッション言葉の乱用で回りくどい
過剰なへりくだりは不自然さや責任回避の印象を与えます。
また、謝罪文での「拝察いたします」は
相手の心情を勝手に推し量る表現として反感を招きがち。
事実と謝意・改善策の提示に徹しましょう。
官僚のメールでの「拝」の扱い
官公庁・自治体などの公文書・公用メールでは、
簡潔・中立・定型が重視されます。
「拝」は儀礼的な文言として完全に排除されるわけではありませんが、
過度に文学的な表現は避ける方針が一般的です。
実務連絡では「確認いたしました」「受領しました」
「送付いたします」のような平明な表現が標準で、
必要に応じて「拝見いたしました」「拝受しました」
を限定的に用いるイメージです。
部署や文書種別のレギュレーション(文例集)に
合わせるのが最優先です。
「拝」を目上の人に使う場合
「拝」は“自分の動作を低める”語なので、
目上相手とも相性が良い表現です。
ただし、頻度と語感のコントロールが鍵。
文中に連発すると不自然になります。
基本構成は「結論→要件→根拠→行動」の骨格を保ち、
必要箇所でだけ「拝見」「拝受」を差し込むと整います。
また、相手の行為には尊敬語を用い、
「ご指示を賜る」「ご教示くださる」のように切り替えることで、
敬語体系の整合性が取れます。
「拝」を含むメールの具体例
実務で即使えるテンプレートをシーン別に記します。
いずれも過剰敬語を避け、要件がひと目で伝わる語順にしています。
ビジネスメールにおける「拝」の例文
【資料受領への一次返信】
件名:資料受領の御礼(株式会社〇〇 △△)
本文:
株式会社□□ ××様
お世話になっております。株式会社〇〇の△△です。
ご送付いただいた提案資料、確かに拝受し、要点を拝見いたしました。
社内で共有のうえ、〇月〇日(火)までにご回答いたします。
取り急ぎ受領のご連絡まで。今後ともよろしくお願いいたします。
【面談日程の調整依頼】
件名:面談候補日のご提示の件
本文:
××大学 ○○教授
平素より大変お世話になっております。△△でございます。
ご提案内容は拝見のうえ、ぜひ直接ご相談申し上げたく存じます。
以下の候補日でご都合をお知らせいただけますと幸いです。
・〇/〇(木)10:00–12:00(オンライン)
・〇/〇(金)14:00–16:00(貴学)
ご多忙のところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。
【不備指摘へのお詫びと再送】
件名:資料差し替えのご連絡(再送)
本文:
株式会社□□ ××様
先ほどの資料に不備がございました。
お手数をおかけし恐縮ですが、差し替え版を拝送いたします。
まずは要修正箇所を下記に整理いたしました。
ご確認のほどお願い申し上げます。
・図2の数値誤記(正:1,250/誤:1,520)
・別紙のリンク切れ
再度のご迷惑、深くお詫び申し上げます。
【年末年始の挨拶(儀礼的文面)】
件名:年始のご挨拶
本文:
旧年中のご高配に謹んで拝謝申し上げます。
本年も変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
【避けたいNG文を是正】
×「カタログをご覧拝ください」
→〇「カタログをご覧ください」
×「後ほどご返信拝願います」
→〇「後ほどご返信ください」/「ご回答賜れますと幸いです」
運用のコツとして、迷ったときは
「メール」「拝」「失礼」の三つの基準でチェックします。
①自分の動作にだけ付けているか(主語チェック)、
②意味が合う語か(語感チェック)、
③読みやすさが落ちていないか(簡潔さチェック)。
この三段階を通せば、
多くの場面で自然で失礼のない文面に仕上がります。
女性が使う「拝」の事例
女性がビジネスメールやプライベートメールで「拝」を使う際は、
状況や相手との関係性に合わせた言葉選びが重要です。
例えば、上司や取引先への返信では
「資料を拝見いたしました」「ご案内を拝受しました」といった
謙譲語表現が適切で、相手への敬意を的確に伝えることができます。
一方、親しい同僚や友人へのメールに過剰に「拝」を多用すると、
かえって距離感を感じさせることもあります。
ビジネスシーンでは丁寧さが重視される一方で、
過剰なへりくだりは不自然な印象を与える場合もあるため、
バランスが大切です。
さらに、女性らしい柔らかさを演出する場合は、
「拝見いたしました」よりも「確認させていただきました」
とする方が自然なこともあります。
職場文化や相手の性格によって適切な表現を選びましょう。
名前の後ろに「拝」を付けるときの注意点
メールの署名や手紙の結びで、
名前の後ろに「拝」を添えることがあります。
例えば「田中拝」と書くと、
「謹んで田中が申し上げます」という意味になり、
丁寧な響きになります。
しかし、現代のビジネスメールでは署名欄に
「拝」を付けるのはやや古風で堅苦しい印象を与えるため、
一般的には避けられる傾向があります。
とはいえ、公式な挨拶状やお礼状など、
フォーマル度の高い文書では「拝」を使うと
より礼儀正しい印象を与えることができます。
たとえば、役員宛ての年賀状やお中元・お歳暮の御礼状では
「山田拝」と結ぶと品格が高まります。
このように、TPOを見極めて使い分けるのが理想的です。
返信メールでの「拝」使用例
返信メールでは、相手から受け取った資料や情報を
確認したことを伝える際に「拝」を使うのが適切です。
例えば、「お送りいただいた資料を拝見しました」
「ご案内状を拝受しました」などです。
ここで重要なのは、
「拝」はあくまで自分の行為に付けるという点です。
相手の動作に「拝」を付けるのは誤用であり、
例えば「カタログをご覧拝ください」とすると不自然です。
代わりに「ご覧ください」や
「ご確認ください」と書くのが正しい形です。
また、返信の早さが求められる場合は、
「資料を拝受しました。内容を確認のうえ、
後日ご連絡いたします。」のように、
次のアクションも添えると親切です。
「拝」の読み方と敬語としての扱い
「拝」の正しい読み方
「拝」は「はい」と読みますが、
熟語になると読み方が変わります。
代表的な例は以下の通りです:
・拝見(はいけん)…見るの謙譲語
・拝受(はいじゅ)…受け取るの謙譲語
・拝読(はいどく)…読むの謙譲語
・拝啓(はいけい)…手紙の頭語
・拝謝(はいしゃ)…感謝を表す表現
これらの言葉はすべて、
自分の行為をへりくだって表現する場合にのみ使用します。
「拝」を敬語として使う際の注意点
「拝」は謙譲語であるため、
自分の動作に限定して使う必要があります。
例えば「資料を拝見いたしました」は正しいですが、
「資料をご覧拝ください」は誤用です。
また、「拝見させていただきます」という
二重敬語も避けるのが望ましいです。
「拝見いたします」または「拝見します」と
簡潔に書く方が自然でスマートです。
さらに、「拝」の頻度にも注意が必要です。
文中に繰り返し使うとくどい印象になるため、
1通のメールで2回以内に抑えるのが無難です。
メールの結語での「拝」の位置付け
「拝」と「敬具」・「草々」の違い
ビジネスメールや手紙では、
文末の結語に「敬具」「草々」などを使います。
「拝啓」とセットで使うのが「敬具」、
「前略」と対になるのが「草々」です。
つまり、「拝」は結語として単独で使うものではなく、
「拝啓」の頭語に含まれる漢字として機能します。
メール文末に「拝」だけを書くのは不適切で、
現代ビジネスメールのマナーにも合いません。
結語における適切な使い方のポイント
フォーマルな手紙やお礼状などでは、
「拝啓」で始まる文章の場合、
必ず「敬具」や「敬白」などの結語で締めるのが基本です。
対して、日常的なビジネスメールでは
「拝啓」から始める書き方はほとんど用いられません。
その代わりに「いつもお世話になっております」
「平素よりご愛顧いただきありがとうございます」など、
柔らかい冒頭挨拶を使うのが一般的です。
結語としても、「敬具」より「よろしくお願いいたします」
「今後ともよろしくお願い申し上げます」といった
現代的な表現が主流になっています。
総じて、「拝」は正しく使えば上品で丁寧な印象を与えますが、
誤用すると堅苦しさや不自然さが目立ち、
「失礼」と取られることもあります。
相手の立場や文書の性質、
コミュニケーションの目的を意識し、
柔軟に使い分けることが大切です。
メールで「〇〇拝」は失礼?正しい使い方を徹底解説 【まとめ】
ビジネスメールで「〇〇拝」を使う際は、
正しい意味と用法を理解することが重要です。
「拝」は「つつしんで〜する」
「ありがたく〜する」という謙譲語で、
自分の動作を低めて相手を立てる表現です。
そのため、主語は必ず自分(自社)であり、
相手の行為には使いません。
例えば「資料を拝見いたしました」
「請求書を拝受しました」は正しいですが、
「カタログをご覧拝ください」は誤りです。
また、「拝見させていただきます」のような二重敬語も避け、
「拝見いたします」と簡潔にするのが自然です。
「拝」は、資料や情報を受け取った際の返信、儀礼的な文章、
送付時の丁寧表現などで活躍します。
ただし頻用するとくどい印象を与えるため、
1通につき2回以内を目安に抑えるとよいでしょう。
署名で名前の後ろに「拝」を付ける表現は
古風でビジネスメールでは避けられる傾向がありますが、
年賀状やお礼状などフォーマルな文面では有効です。
現代のメールでは「拝啓」「敬具」などの伝統的な
頭語・結語はあまり使われず、
「いつもお世話になっております」
「よろしくお願いいたします」などシンプルな挨拶が主流です。
官公庁や公的メールでは特に簡潔さが重視され、
必要最小限の「拝見」「拝受」に留めるのが基本です。
総じて、「拝」は使い方を誤らなければ
丁寧で上品な印象を与えますが、
乱用や誤用は「失礼」「不自然」と受け取られる危険があります。
文書の目的や相手との関係性を意識し、
適切な場面でスマートに活用することがポイントです。